COUNT UP!

COUNT UP! ―― PERFECTに挑む、プロダーツプレイヤー列伝。
―― PERFECTに参戦するプロダーツプレーヤーは約1,700人。
彼ら彼女らは、何を求め、何を夢み、何を犠牲に戦いの場に臨んでいるのか。実力者、ソフトダーツの草創期を支えたベテラン、気鋭の新人・・・。ダーツを仕事にしたプロフェッショナルたちの、技術と人間像を追う。
2017年1月18日 更新(連載第84回)
特別編
2016PERFECT年間チャンピオン 特別インタビュー
髙木静加

特別編 髙木静加(2016PERFECT年間チャンピオン)
ニューヒロイン誕生!

COUNT UP!

2016年シーズン年間総合優勝者インタビュー第2弾は、髙木静加選手です。開幕戦でキャリア初の優勝を遂げると、第6戦、第7戦を連勝し、年間女王レースの主役に躍り出ました。シーズン後半は連覇を目指した大城明香利選手とデッドヒートを繰り広げましたが、第11、13、15戦でも優勝して年間6勝をあげ、前女王の猛追を振り切り、初の栄冠を勝ち取りました。PERFECT全戦参戦2年目で、開幕前はほぼ無名。僅か1年でスターダムを駆け上った髙木選手は、開幕10年目を迎えたPERFECTの歴史に、新たなシンデレラストーリーを綴りました。

「一戦々々、勝ちたい。ただそれだけでした」

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――新女王となった今の率直な気持ちをお聞かせください。
 嬉しいですね。はい。嬉しいですけど、最終戦ではベスト16で負けてしまったので、それは悔しかったです。

――2015年シーズンまでは優勝はありませんでした。今季のジャンプアップの要因はどこにあったと思いますか?
 開幕戦で優勝して、北海道のみんながものすごく喜んでくれたのが大きかったと思います。それで、こんなに喜んでもらえるなら、年間女王を獲りたいと強く思うようになりました。

――技術的には
 年間を通して、フォームは少しずつ変えました。イメージ的にはテイクバックをもう少しとるようにしたりとかですね。特に、後半戦はちょっとフォームが崩れていたので、いろいろ試しました。まだ、完成形ではないので、まだ、試行錯誤を続けています。

――1年間を振り返って、どんな戦いでしたか。中盤までは大内麻由美さんとデッドヒート、中盤からは大城さんが窮迫してきました。どんな気持ちで戦っていましたか?
 年間女王を獲りたいとは思っていましたが、女王レースのことはあまりなんにも考えていませんでした。ただ、一戦々々勝ちたい。それだけです。明香利ちゃんが後半に来るのは分かっていましたから、(追い上げられても)焦りはありませんでした。

――逃げきれると思っていましたか?
 それはなかったです。自分の調子も落ちてきていて、後半はあまり自分が納得するダーツができてなかったので、年間を通して好調を維持して、常にトップにいるのは難しいと思いました。

――後半に調子を落とした原因をどう分析していますか?
 やっぱり、プレッシャーが大きかったと思います。ダーツはメンタルなので。ただ、開き直れたのはよかったと思います。やるしかない、みたいな感じでしたね。

「途中から見られなくなりました」

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開幕直後は調子が上がらなかった大城選手は、第4戦で今季初勝利。第9戦、第10戦を連勝しフルスロットルで猛追を始める。最終盤の第17戦、第19戦も勝利し、最終戦を前に髙木選手との年間総合ポイント差は61ポイント。最終戦で髙木選手がベスト16以下で、大城選手が優勝すれば大逆転という展開となる。
 迎えた最終戦。髙木選手は、勝てば年間女王が決まるベスト16でまさかの敗退。一方の大城は順調に勝ち進み、準決勝まで駒を進めた。

――最終戦の状況は知っていましたか?
 自分では調べませんでしたし、なるべく聞かないようにしてたんですけど、やっぱり、最終戦の試合の前に、ベスト8に残れば決まるってみんなに言われたんで、意識はしてしまいました。

――その、ベスト16で負けてしまいました
 勝てば、っていうのが、ありましたね。やっぱり。それで、硬くなってしまいました。

――そのあと、大城さんの試合は見てましたか?
 準決勝は最初は控室のモニターで見ていました。でも、途中から見られなくなって、会場を出てしまいました。

――年間女王決定は、いつ知ったんですか?
 みんなから、連絡が来て知りました。一位になったよって。嬉しかったですね。下がったり上がったり、結構ハードな一日になっちゃいました。

――大城さんは、昨年(2015年)の女王インタビューで、髙木選手が一度優勝すると怖い存在になると話していました。昨年は1勝7敗でしたが、今年は前半戦で2勝、後半戦は2敗です。大城さんは、どんな存在ですか?
 一番、意識する選手ですし、試合でも一番緊張します。明香利ちゃんは、シーズン前半と後半で全然違いました。後半、追い上げられて、経験に差があることを実感しました。

「運もあったと思います」

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年間女王となった髙木選手だが、スタッツランキングは01のPPDは34.71で4位、クリケットのMPRは4.17で2位。PPD、MPRとも1位は前女王の大城で、髙木は後塵を拝した。

――髙木さんは年間女王に加え、年間6勝で年間最多勝です。一方の大城さんは年間5勝ですが、スタッツランキングではPPDもMPRも1位です。数字では、一番上手かったのが大城さん、一番強かったのが髙木さんです。一番上手い大城に勝てたのは、なぜだと思っていますか?
 運もあったと思います。去年は明香利ちゃんと何度も対戦しましたし、トーナメントの前半でもたくさんあたりましたけど、今年は直接対決があまりありませんでした。明香利ちゃんが調子を上げていた後半戦でもう少しあたっていたら、どうなっていたかわからないです。

――先ほど、年間を通して調子を維持することの難しさを実感したとお話になりましたが、どのように調整していましたか。また、メンタル面での心の拠り所はありましたか?
 調子が落ちてきたときは、とにかく練習しました。最終戦の前は、札幌の人たちが心配して、練習相手になってくれました。応援してくれるみんなとの練習は、技術的なことだけではなく、心の支えにもなりました。みんな見てくれている、応援してくれている、と思うと、頑張ろうという気持ちになれました。
 北海道だけでなく、遠征先の各地でも応援してくださる方も増えました。大会前に連絡をくださったり。それは、もの凄い力になりました。

――今年のベストマッチは?
 やっぱり、開幕戦の決勝が一番ですかね。初優勝で自信もつきましたし、波に乗れました。あれがなかったら、その後も全然違っていたと思います。
 あと、もの凄く個人的なことですけど、一番嬉しかったのは京都大会で優勝できたことです。北海道から両親が初めて見に来てくれて、その前で優勝できたのが、とても嬉しかったんです。父も母もダーツのことは何も知らなかったんですが、京都に見に来てくれた後は、動画も見てくれるようになりました。

ZOOM UP LEG

2016 PERFECT 開幕戦 横浜 「決勝」

第1LEG「701」
田中 美穂(先攻)   髙木 静加(後攻)
1st 2nd 3rd to go   1st 2nd 3rd to go
B 12 15 624 1R B B B 551
B B B 474 2R B B B 401
B B B 324 3R B B B 251
B B B 174 4R B B B 101
20 B B 54 5R B T2 T2 39
1 3 5 45 6R T6 T19 39
2 8 3 32 7R 13 D13 0
WIN
T=トリプル D=ダブル IBL=インブル OBL=アウトブル
第2LEG「クリケット」
髙木 静加(先攻)   田中 美穂(後攻)
1st 2nd 3rd to go   1st 2nd 3rd to go
× T20〇 × 0 1R 19 × 19 0
T19〇 19 T19 76 2R 18 × × 0
18 18 18〇 76 3R 17 T17〇 T17 68
17 17 17● 76 4R × 16 T16 84
× 19 16 95 5R × × × 84
T16● 15 T15〇 110 6R × × OBL 84
OBL OBL OBL〇 110
WIN
7R
T=トリプル D=ダブル IBL=インブル OBL=アウトブル 〇=オープン ●=カット
第3LEG「クリケット」
田中 美穂(先攻)   髙木 静加(後攻)
1st 2nd 3rd to go   1st 2nd 3rd to go
20 20 20〇 0 1R × 19 19 0
20 20 20 60 2R × 19〇 19 19
× 19 T20 120 3R × T19 T19 133
T20 T19● × 180 4R 18 T18〇 T18 205
T20 18 T20 300 5R × T18 × 259
× 18 18● 300 6R × × 17 259
× 18 18● 300 7R 16 16 16〇 259
× T16● 20 320 8R 15 T15〇 T15 319
15 × 20 340 9R 15 T15 T15 424
20 20 T20 440 10R T15 T20● × 469
× × 17 457 11R × × 17 469
× 17 × 474 12R 17 T15 × 514
OBL IBL〇 T15● 474 13R IBL IBL● 514
WIN
T=トリプル D=ダブル IBL=インブル OBL=アウトブル 〇=オープン ●=カット

「両親の前で優勝できたのが、とても嬉しかったです」

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――来年はどうしましょう。課題はありますか?
 女王になりましたけど、それは忘れて、来年は来年で、挑戦者の気持ちで臨みたいと思います。もちろん、目標は年間女王ですけど、来季はスタッツも獲りにいきたいと思います。明香利ちゃんみたいに3冠を獲らないと、真の女王という気がしません。
 今年は、前半戦ではブルがよかったんですが、後半は崩れました。フルレグで対戦相手に01を選択されることが多くなり、自信もなくしていました。そこが課題です。

――挑戦者の気持ちと言われましたが、追われる立場になるのは当然です。大城さん以外に、意識する選手はいますか?
 いっぱいいます。佐藤かす美さんとか、藤野裕加里さんとか、怖い人は結構います。 怖いなという人は結構いますけど。

――今季(2016年シーズン)の開幕前は、まだ、トッププレイヤーではありませんでした。来季は初めてトッププレイヤーとして、しかも新女王として開幕を迎えます。心境の違いはありそうですか?
 来季はプロ5年目のシーズンを迎えますが、プロになってトップの人を間近に見るようになって、自覚って言うのか、少しずつ芽生えては来ています。でも、まだまだ。トップの人は違うなって思います。
 他の選手を見ていると、自分に足りないものが凄くよく分かります。試合が終わった後のファンの方との対応とか、試合への入り方とか。控室にいるときも、外に出ていくときも、トップの選手を見ていると、やっぱり違うって、思います。
 私は喜怒哀楽がなんでもすぐ顔に出てしまうんです。いい時もあるけど、悪い方に出てしまうこともあるので、そういうところは意識して、トップの選手を見習って勉強していきたいと思います。

――女王として一年戦うことになりますが、どんな女王になりたいと思いますか?
 ファンの方々から、もっと応援してもらえるような女王になりたいと思います。どうすればそうなれるか、それは難しいですけど、やっぱり、常に真剣で、負けそうでも負けない、絶対に諦めない、勝負に直向きなプレイヤーになりたいと思います。

――シーズンが終わって、今、一番したいことは?
 とりあえず、美味しいものを食べて、お店の子たちとご飯行ったり、旅行行ったりしたいです。感謝の気持ちも込めて、とにかく、みんなと美味しいものを食べます。

(終わり)


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○ライター紹介

岩本 宣明(いわもと のあ)

1961年、キリスト教伝道師の家に生まれる。

京都大学文学部哲学科卒業宗教学専攻。舞台照明家、毎日新聞社会部記者を経て、1993年からフリー。戯曲『新聞記者』(『新聞のつくり方』と改題し社会評論社より出版)で菊池寛ドラマ賞受賞(文藝春秋主催)。

著書に『新宿リトルバンコク』(旬報社)、『ひょっこり クック諸島』(NTT出版)などがある。